自己破産と個人再生 どちらを選択すべきか?
自己破産と個人再生、どっちがよいのか? 違いは? お悩みの方もいらっしゃるかと思います。まずは、両者の基本的な違いを整理してみましょう。
- 個人再生は、最低100万円の債務が残ります(※1)。
ご事情により、もっと多額の債務が残ってしまうケースもあります。
個人再生による解決で、トータルで必要な資金は「弁護士費用・実費」プラス「債務の弁済金(100万円~)」です。 - 自己破産は、原則的に全ての債務が免除されます(※2)。
「同時廃止」の場合、トータルで必要な資金は「弁護士費用・実費」のみです。
「管財事件」の場合、トータルで必要な資金は「弁護士費用・実費」プラス「裁判所に納める予納金(20万円~)」です。 - 個人再生は、裁判所での手続が終わった時点(再生計画認可決定の確定)から、原則3年(最大5年)の分割返済が始まります。
- 自己破産は、裁判所での手続が終わった時点(免責許可決定の確定)で、ただちに債務全額の支払義務が免除されます。
- 個人再生は、自己破産と似た部分もある制度ですが、一定の支払が残ります。自己破産に比べて「解決のためにトータルで必要な資金」はずっと多く、「完全解決までの時間」も長くかかる解決方法です。
- 個人再生は、<自己破産には無いメリット>を有していますが、その特性をよく理解した上で活用する必要のある解決方法といえます。
「債務の問題を解決して再スタートしたい」と考えた時、「必要となるトータル資金」の面でも、「完全解決までの所要時間」の面でも、「手続完了後のリスク」の面でも、個人再生より自己破産の方が、より根本的な・より負担の軽い・よりスピーディな解決方法です。
ただ「個人再生でなければ、実現できないこと」があります。
「自己破産は、どうしても嫌だ」という方も、いらっしゃいます。
あなたのケースは、どうでしょうか?
自己破産と個人再生、それぞれの特徴、違いについて、早い段階で基本的な知識を得てください。
まずは「名古屋駅 弁護士の無料法律相談」をお申込みください。
自己破産と個人再生 選択の観点
「自己破産」「個人再生」どちらを選択することが、より適切な選択肢でしょうか?
ご事情や価値観は様々ですから、最終的には「ご本人にとって、一番重要で、最優先したい事は何なのか」という観点から、解決方法を選択することがよいと思います。
例えば、「ローン中の自宅を残す」ことが最重要という方は、自己破産による解決ではご希望を実現できないため、正面から個人再生を検討することになります。
一方、「とにかく早期に負債をリセットして再スタートする」ことが最重要という方は、まず自己破産を検討しましょう。
「自己破産は、どうしても嫌だ」というお気持ちの部分が最重要であれば、個人再生によって債務を減らし、返済負担を軽くする形の解決を検討してみてください。
個人再生でなければ実現できないご希望の方(個人再生の方向)
- ローン中の自宅を、どうしても残したい方
- 職業上、自己破産できず、転職も現実的でないという方
こうした方は、個人再生でなければ理想の解決が実現できませんから、正面から個人再生の可能性を検討します。
まずは「個人再生した場合の返済予想額」を試算し、返済可能な範囲内かどうかを確認しましょう。
お気持ちの面・価値観の面からの判断(個人再生の方向)
- 「自己破産は、どうしても嫌だ」という方
- 「個人再生の方が、家族・職場に説明しやすい」という方
まず、自己破産による「債務の全部免除」という結果を目指さない方針で本当によいのか、という検討は一応行いつつ、まずは「個人再生した場合の返済予想額」を試算し、「個人再生という解決手段を、現実的な選択肢として考えてよいのか」という点を確定させましょう。
経済的な観点からの判断(自己破産の方向)
- 現在の債務を、早くリセットして再出発したい方
- トータルでの経済的負担を、より軽くしたい方
- 今後、何年もかけての返済に不安がある方
自己破産は、免責確定の時点で、原則的に全ての債務が免除されますから、個人再生よりもずっと短期間で、今回の債務問題を完全解決できます。
また自己破産は、個人再生よりも「トータルで必要な出費」の少ない、経済的に負担の軽い解決方法です。
「同時廃止」の場合、個人再生に比べて、解決のためにトータルで必要な出費は100万円以上も少なく済むケースも多いと思います。
「管財事件」の場合、裁判所に予納金(20万円~)を納付する必要がありますが、それでも個人再生に比べれば、トータルの出費は70万円~80万円程度(あるいはそれ以上)少なく済むケースが多いと思います。
もちろん「個人再生の返済予定額がいくらになるか」、また「自己破産の場合は少額管財の適用があるケースか」、など諸事情によって状況は変わりますが、一般的には自己破産の方がトータルの経済的負担は大幅に軽いです。
ともかく経済的負担を軽くしたい、この機会に全てリセットして、早く再出発したいという方は、まず自己破産を検討してみてください。
経済的な観点からの判断(個人再生の方向)
- 「債務が減額されれば、十分支払っていける」という方
- 「破産するほどの状況ではない。払っていく方向で解決したい」という方
個人再生により、多くの方が【 債務免除率 70%~80% 】という大幅な債務元金のカットを実現しています。
しかも残った債務は通常、将来利息のつかない固定額となります。
返済能力が十分あり、「やはり自己破産は嫌だ」「債務元金が減れば、あとは返済していける」という方は、個人再生による解決を検討しましょう。
個人再生 注意すべき点の再整理
- 最低でも100万円の債務が残ります。
ご事情によっては、もっと多額の債務が残るケースもあります。 - 残った債務を、原則3年(36回払)~最大5年(60回払)で分割返済します。
返済が完了して全てが解決するまで、時間がかかる解決方法です。 - 一定の「返済能力」が必要な解決方法です。
- 「返済予定額を、きちんと準備できる経済力がある」と、裁判所に認めてもらうことが必要な手続です。
給与明細や家計簿などの根拠資料をもとに、具体的な返済能力を示せなければ、再生計画は認可されません。 - 個人再生がスムーズに進むかどうかは、申立前の準備にかかっています。
自己破産の場合以上に、弁護士とよく連絡を取り合い、生活内容をととのえて、再生申立に備える必要があります。
つまり自己破産よりも、「生活内容について細かい調整が必要」であり、ご本人様にも、お願いする事・守っていただく事が、より多くなります。 - 個人再生手続が完了してから、最低3年の分割返済が始まるため、途中で支払えなくなるリスクが残ります。
自己破産 注意すべき点の再整理
- 「ローン中の自宅をどうしても残したい」というケースでは、選択できません。
- あなたが「浪費やギャンブルがあると、免責が許可されない。個人再生するしかない」と思われているとしたら、それは誤解です。
当事務所では、浪費やギャンブルがあるケースについても、自己破産による多数の解決実績がありますから、ご相談ください。 - 免責許可によって、全ての債務が支払義務を免除されるため、「解決後に支払えなくなるリスク」は一切ありません。
- 「弁護士」に依頼しておけば、もし「同時廃止」が認められず「管財事件」になった場合でも、管財事件全体の6割~7割で「少額管財」が適用され、裁判所に納める「予納金」は半額の20万円になります。
- 「司法書士」に依頼した場合、「少額管財」が利用できないため、原則通り予納金40万円の準備が必要となる可能性がありますから、この点は知っておいてください。
個人再生・自己破産 共通点
- 官報に掲載されます。
- 全ての債権者を、平等に取り扱わなければなりません。
- 特定の債権者だけ、優先的に弁済することはできません。
- お持ちの財産を、全て明らかにする必要があります(退職金や不動産、自動車の価値も含めて)
- 準備すべき必要資料は、ほぼ同じです(給与明細、源泉徴収票等)
- 同居の家族について、原則的には収入資料の提出が必要です(家計を分離できるケースもあります)
個人再生は、返済の負担が残ります
例えば、債務総額600万円の方が個人再生をした場合、最低でも120万円の債務が残ります(債務免除率80%)。
この結果について、「債務が480万円も減った」と考えるのか、「せっかく弁護士に依頼して費用も支払ったのに、120万円も債務が残ってしまった」と考えるのか?
ここは、ご本人の価値観や、経済力によって判断の分かれる部分かと思います。
比較的、安定した経済力のある方であれば、債務元金が480万円も免除され、残った債務が将来利息カットの固定額になるのであれば、「今後は十分返済していける」「自己破産は避けたいので、個人再生がベストだ」という結論となるケースもあるでしょう。
一方、「返済能力に不安がある」「毎月の家計に、あまり余裕がない」という方は、その場だけ頑張って家計を切り詰めて、無理に個人再生を通しても、その後の返済が大変です。
例えば、残った債務総額120万円を、最も月額負担の軽い5年(60回払)で分割払する場合、個人再生手続が終わった後から5年間、毎月2万円を準備し、支払っていかなればなりません。
仮に「自己破産」して債務の全額免除を得ていた場合、この毎月2万円は、お手元に残せるのです。
毎月、2万円を自由に使えるならば、今後5年の生活水準は、全く違ったものになるのではないでしょうか?
個人再生では、債務が大幅に減額されるケースも多いため、「とても楽になったような感覚」を受けてしまいがちですが、冷静に考えれば最低100万円以上は残る負債も、とても大きな金額ですから、あまり軽く考えてはいけません。
個人再生を選択する場合、「残った債務の返済負担が、その後の生活にどの程度、影響してくるのか」という部分は、冷静に検討していただきたいと考えています。
もちろん、こうした部分を十分考慮しても、「どうしても自己破産は抵抗がある」「やはり個人再生によって解決したい」というご希望の方については、スムーズな再生計画認可に向けて、全力でお手伝いさせていただきます。
無料法律相談の際、ご本人にとって重要な部分、重視していきたいポイントを、詳しくお聞かせください。
ローン中の住宅を残したい場合 注意事項
「住宅ローンを支払いつつ、他の債務を減らしたい」というご希望は、「自己破産」によって実現することができません。
まさに、「個人再生」による解決を正面から検討すべきケースといえます。
ただ、住宅資金特別条項を用いた個人再生には、細かな条件が色々とあります。
詳しく調査してみると、残念ながら個人再生という解決手段を選択できないケースも散見されます。
「あなたのケースは、そもそも住宅資金特別条項付の個人再生を選択可能なのか」という点については、早い段階で確認しておく必要があります。
住宅ローン契約書、不動産登記簿など関係資料をお持ちいただいて、弁護士が具体的に検証し、詳しいご説明を差し上げます。
ともかく早い段階で一度、無料法律相談をお申し込みください。
激しい浪費、頻繁なギャンブルがある場合
激しい浪費、頻繁なギャンブルなどが原因で債務を増加させてしまったケースでは、「免責不許可」のリスクが生じることがあります。
このため、浪費やギャンブルがあるケースについて、自己破産による解決方針を全く説明をせず、個人再生の説明だけを行う弁護士事務所・司法書士事務所もあるようです。
しかし結論から申し上げると、浪費やギャンブルがあったからといって、ただちに「免責不許可」となるわけではなく、自己破産による解決も十分可能です。
実務上は、きちんと生活内容を改善した上で「免責観察型の少額管財事件」として自己破産申立を行い、破産管財人による生活指導を一定期間受けることで、多少深刻な浪費やギャンブルのあるケースも含めて、多くのケースで裁量免責を得られています。
当事務所では、解決方法を最初から「個人再生」に限定することはせず、「自己破産」による解決方針も、可能な限り提案させていただきます。
ただ、事前に免責許可を100%確約することは誰にもできませんから、ご本人として「免責不許可となるリスクが、どうしても気になる」ということであれば、個人再生による解決も、検討してみましょう。
ご希望内容に応じて、弁護士から「自己破産」「個人再生」両方について詳しいご説明と、アドバイスを差し上げます。
「自己破産」「個人再生」それぞれのメリット・デメリットを十分理解していただいた上で、解決方針を決断してください。
一部の債権者に、優先的な支払いをした場合
「自己破産」「個人再生」いずれも、全ての債権者を平等に扱うべきというルール(債権者平等原則)が適用されます。
債務が非常に大きくなり、もはや返済できない状況になった時、知人や親族など一部の債権者だけを特別扱いして、優先的に返済する行為が、しばしば見られます。
こうした一部債権者への駆け込み的な優先的弁済は「偏波弁済(へんぱべんさい)」という問題行為に該当することがあります。
偏波弁済は、その時期や具体的内容にもよりますが「自己破産」「個人再生」いずれの場合でも問題となりうる行為です。
自己破産における偏波弁済の問題
偏波弁済行為は、破産管財人による「否認(※3)」の対象になる場合があるほか、最悪の場合は「免責不許可事由(※4)」に該当する可能性もあります。
個人再生における偏波弁済の問題
個人再生の場合、自己破産における「否認」や「免責不許可事由」の問題は生じません。
ただ偏波弁済と判断された金額は、本来であれば手元に残っているはずのお金ですから、あなたの資産総額(清算価値)は、偏波弁済額を加算した上で算出されます。
個人再生では、あなたの資産総額(清算価値)以上の金額を弁済しなければならないというルールがあるため、偏波弁済によって清算価値が増加すると、個人再生の最低弁済ラインも上がります。
偏波弁済と判断された金額によっては、「個人再生を行っても、あまり債務が減らない」「まったく債務が減らない」という状態になってしまう可能性があるのです。
また、悪質な偏波弁済行為と裁判所に判断された場合、「不当な目的」「誠実にされたものでない」再生手続開始申立(民事再生法第25条4号)にあたるとして、個人再生の申立自体が「棄却」されてしまう危険もあります。
偏波弁済など、不正な財産処分を行う前にご相談ください
以上のとおり偏波弁済は、その具体的な時期・内容にもよりますが、「自己破産」「個人再生」いずれの場合でも問題となりうる行為です。
「個人再生」を選択することで、「自己破産」で問題となりうる事情を、全て回避できる訳ではありませんから、注意してください。
「これ以上は、支払えそうにない」と感じた段階で、すぐ弁護士に相談されることが、「自己破産」「個人再生」どちらの解決方法を選択するにしても、スムーズな解決への近道です。
自己破産と個人再生 どちらを選択すべきか? まとめ
「自己破産」と「個人再生」は、似ている部分と全く違う部分があり、一般の方には少し分かりにくいかもしれません。
弁護士が、あなたのご希望、最優先事項をお聞きした上で、「自己破産」「個人再生」に関する詳しいご説明と、解決プランの提案をさせていただきます。
まずは「名古屋駅 弁護士の無料法律相談」をお申込みください。
※1:債務総額が100万円~500万円の範囲内にあるケースの場合です。
債務総額が100万円より少ないケースは、個人再生をしても全く債務が減らないため、通常は個人再生を選択するメリットがありません。
※2:税金などの非免責債権は、自己破産しても残ってしまいます。
※3:破産管財人が、不正な弁済行為などを無効化して、流出した財産を取り戻すための権限です。
※4:破産法252条1項各号に該当する行為は「免責不許可事由」とされており、これらの事情がある場合、免責が許可されない可能性が生じます。
具体的には、浪費やギャンブルによって著しく財産を減少させた場合や、裁判所に対する虚偽説明、財産隠しなどが、典型的な免責不許可事由です。