■自己破産の手続
■申立書類を出して終わり、ではありません
ご自分で破産申立をしてみたものの、その後の手続きが手に負えなくなったという相談のお電話を頂くことがあります。途中からですと状況も分かりづらい上、既に状況が混乱しているわけですから、当事務所でリリーフに入ることが実際問題として難しい場合もあります。
誤解されがちな所ですが、自己破産というものは申立書類を作成して裁判所に提出すれば、それで完了というような安易なものではありません。
適切な申立書類の作成は、その後のスムーズな破産手続進行のために大変重要ですが、申立をした後で裁判所への様々な対応が必要となる場合も珍しくないのです。
■自己破産申立後の手続き(名古屋の運用を中心に)
破産・免責は借金の支払義務を原則的に全て免除するという強力な効果を生じさせますが、個人破産の場合には以下の3段階をクリアする必要があります。
- 「破産手続開始決定」を裁判所に出してもらい、
- 次に「免責許可決定」を出してもらい、
- その「免責許可決定」が確定する
まずは破産手続開始の決定を出してもらうことが、多重債務から脱出するための第一歩となるわけです。 とはいえ、この最初の関門をスムーズに通過することも、それほど簡単ではありません。
■補充事項
破産申立書を作成し、最低限必要な添付書類を揃えて地方裁判所に提出すれば、とりあえず窓口で受け取ってもらうことはできます。問題はその後です。
裁判所は申立書の内容を端から細かくチェックしてから、期限付きで不足資料の提出や、不明点の説明などを求めてきます。 この補充事項について十分な対応をしなければ、破産決定を出してもらうことすらできません。
中途半端な内容の申立書を提出してしまうと、あとで大量の補充事項を求められることになってしまい、破産手続が最初からつまづいてしまうことでしょう。
■債務者審尋
申立書の内容や事案そのものの問題性によっては、書面上の審査だけでは不十分と判断され、裁判官が直接あなたの説明を聴取する「債務者審尋」が実施されることもあります。
この場合、あなた(申立人)は裁判所に出頭し、債務増加の経緯や今後の生活の見通しなどを、裁判官から直接聴取されることになります。
この債務者審尋も無事にクリアしなければ破産決定を出してもらえませんから、説明が求められている事項については事前にきちんと準備して臨む必要があります。
※当事務所では、債務者審尋が実施される場合、必ず弁護士が審尋期日に同行してサポートをいたします。
■管財事件と免責許可決定
無事に破産手続開始決定が出されたとしても、次は裁判所に免責許可決定を出してもらい、この決定を確定させなければなりません。
破産手続開始決定は、「債務を支払えない」ことを判断しただけであって、「支払わなくてもよい」ことにはなりません。
免責許可決定の確定を得て、債務を支払わなくてよいものと認めてもらわなければ、ご本人としては多重債務の問題解決にはならないのです。
債権者に配当できるような財産が残っておらず、破産手続上の問題点も特に無いような場合、裁判所は破産手続開始決定を出すのと同時に破産手続を終了させてしまうこともあります(同時廃止)。
この場合は、引き続いて免責の可否を判断するための免責審尋期日が指定されます。
一方、浪費・ギャンブルなどの免責不許可事由があるケース、配当可能な財産が見込めるケースなどでは、裁判所の判断で破産管財事件になる可能性があります。
破産管財事件において申立人の免責を許可するかどうかは、破産管財人による調査・換価などの管財業務が完了した後に判断されることになります。
あなた(申立人)は破産管財人の調査に対し正直に事実を打ち明け、管財業務がスムーズに行われるよう協力しなければなりませんし、後日裁判所で開かれる財産状況報告集会に出頭する必要があります。
※当事務所にご依頼された場合、こういった免責審尋期日、破産管財人との打ち合わせや財産状況報告集会等についても、弁護士が同伴してサポートをいたします。
無事に免責許可決定が出されれば、あとはこの決定が確定するのを待つことになります。
■破産手続のスムーズな進行のために
このように、自己破産というものは申立をした後も、事案自体の内容や債権者の意向次第で、様々な対応が必要となる可能性があります。
破産手続のスムーズな進行のためには、まず内容の整った破産申立書類を作成することが大変重要ですが、それだけではなく破産・免責の可否を判断する裁判所側の疑問や要求に対して、迅速適切に対応するスキルが重要となるわけです。
当事務所では個人・法人の自己破産について日々様々なケースを取り扱っており、解決実績も豊富です。多重債務から脱出し経済的更正を実現するための選択肢として、ご検討いただければと思います。
<2008.10.5>
※当コラム掲載文は、執筆当時の状況に基づいた内容となっております。法令・判例の変更や状況の変化等が生じている可能性もありますからご注意下さい。最新の状況については、当事務所の無料法律相談にてご説明しておりますので、お気軽に相談予約をお申し込み下さい。
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